国旗:日本 国旗:ミャンマー「ヤンゴンナウ」は1999年創業の日系旅行会社「サネイトラベル」がお届けするミャンマー総合情報サイト

  • 7年前、単身ミャンマーへ渡り、以来現地に身を置き激動の時代を生き抜く。企業・政府・マスコミ等との長年に渡るビジネスを通して培ったスキルや現地・日本の人脈をフルに活かした調査・進出コンサルティングは在ミャンマー日本人の中でも随一である。 Since 2001/1/1
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 西垣が聞く! ミャンマー起業家列伝


 「グーグル帰り」ミャンマーの交通を変える

 急速なスマートフォンの普及とともに、激変するミャンマーのITビジネス環境。スマホアプリでタクシーなどが配車できる「オーウェイライド」を手がけるオーウェイのネアウン最高経営責任者(CEO)は、米国のグーグルで勤務し、いくつもの事業のスタートアップを手がけた根っからのIT起業家だ。ネアウンCEOがミャンマーで何を目指すのか、ジェイサットコンサルティングの西垣充チーフコンサルタントが切り込んだ。

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西垣:

 米国でも会社を立ち上げるなど成功していたと聞いています。どうしてミャンマーに戻って起業したのですか。

ネアウン:

  米国に渡ったのは17歳の時でした。ヤンゴンのインターナショナルスクールの高校を卒業して、米国の大学に進学しました。その頃は、宇宙物理学者になりたかったのです。しかし、途中でその夢を断念して、経済と法を勉強することにしました。ロンドンのLSEで修士、その後、米スタンフォード大のビジネススクールを修了しました。立ち上げたオンラインリサーチ会社が成功し、米ヤフーに買収されました。その後グーグルに移り、「グーグルウォレット」を手がけたほか、社内コンサルタントの業務にあたりました。

 そうした中で、ミャンマーには政治改革の機運がありました。まだどうなるかわかりませんでしたが、政治改革が進むということと、IT分野に対して大きな投資が行われるということは確実と考えて、ミャンマーで起業することにしました。

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 帰国してまず手掛けたのは、エクスペディアのような旅行予約サイトです。ミャンマーのような発展段階の国では、GDPの成長率の5倍の勢いで旅行業界が伸びることが知られています。例えば、成長率が7%であれば、35%で旅行業が伸びるということです。実際に、直近のミャンマーの旅行業は92%の伸びを示しています。また、旅行はITとの相性もよいのです。インドでは、Eコマースの中で旅行業が占める割合は8割に達した時期もありました。 

西垣:

そのような狙いがあったのですね。今ではオーウェイライドのロゴをつけた車を多く見かけるようになりましたが、そこまではどのような道のりがあったのですか。

ネアウン

 実際のところ、私がミャンマーに帰って起業したのは2012年で、少し早かったと思います。1年ほど早かったですね。当初はミャンマーには3カ所しかまともにネットが使える場所がなく、そのうち2カ所のコーヒーショップを使って仕事をしていました。まずは旅行サイトから始めました。そして関連サービスに手を広げ、法人向けのレンタカー事業を立ち上げました。私の理解では、弊社のレンタカー事業はミャンマー最大手です。今年初めに開始したオーウェイライドは2600台の契約タクシーがあります。将来的には、ヤンゴン周辺の7万台のタクシーなどのほとんどに登録してもらい、ドミナント的な地位を築きたいと思っています。

西垣:

ミャンマーのIT環境は急激に変化していますね。御社のサービスの利用状況はどうですか。

 オーウェイライドのユーザーのほとんどはミャンマー人です。ビジネスマンの利用が中心です。目新しいものが好きなアーリーアダプター層が利用しています。アプリの浸透がカギですから、使いやすいアプリにしなくてはなりません。アプリを使い慣れていない人でも使えるよう、できるだけ簡単に使えるインターフェイスを開発しています。また、待ち時間の短縮が重要なのですが、ヤンゴンの渋滞の状況では難しいところがあります。距離は近くても、とても時間がかかってしまうケースもあります。そこで、現在、ドライバーに対して迂回路など最適ルートを提示できるような機能を開発中です。

 ミャンマーでは、サービスを受け入れてもらうことが大きな課題です。このため、使いやすく競争力のあるアプリを開発しないといけません。同業のハローキャブはアプリよりもコールセンターを重視しているようです。弊社もコールセンターを整備していますが、どちらかというとアプリの開発に重きを置いています。

西垣:

 グーグルウォレットにも携わったとのことですが、ミャンマーの電子マネーの状況をどうお考えですか。

ネアウン:
 

 そうですね。たくさんのサービスが生まれていますが、まだどのサービスが主流になるのかがはっきりしていません。電子マネーの定着には、システムの開発、プロモーションなど巨額の投資が必要です。しかしどこのサービスが勝つにしろ、3年以内に電子決済が使いやすくなることは間違いがないでしょう。海外のビザやマスター、JCBがサービスを始めていることも有望な動きですね。

西垣:

 ミャンマーでは、人材が成功を左右するカギといっても過言ではありません。特にマネージャークラスの人材獲得は大変困難になっています。人材育成はどのように行っていますか。

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ネアウン:
 

 現在会社のスタッフは、運転手を除き約260人となりました。幹部クラスでは幸運なことに、創業メンバーが長く支えてくれています。組織は、5~6人の優秀な中核メンバーがいればうまく回ります。各分野の中核メンバーを育成することができるかがとても重要になります。私もノウハウを教え込みますし、海外へ研修に出して、進んだITサービスを知ってもらうような取り組みをしています。

 運転手に関しては、採用時にペーパーテストと実技試験をともに行います。採用後も法人向けのドライバーは定期的に研修を行うほか、オーウェイライドの運転手も義務ではないものの、研修の機会を提供しています。運転技術や法規制だけではなく、最近は語学力も重視していてアプリで利用者が格付けする際に、その点も評価できるようにしました。

西垣:

 将来の目標を教えてください。

 実のところ、2年ごとに新事業を立ち上げないと、企業の成長が維持できないと考えています。世界銀行グループの国際金融公社(IFC)や日本の投資家ともパートナーを組み、次の一手を考えています。株式の上場についても、2~3年をめどに具体的な検討に入りたいと思います。

 カンボジア、ラオスという周辺地域にもサービスを拡大して、8000万人の人口を抱えるこのエリアでリーダーの地位を確立することを目指しています。

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ネアウン氏

 オーウェイの創業者にして最高経営責任者(CEO)。ロンドンスクールオブエコノミクス(LSE)、米スタンフォード大ビジネススクール修了。米国のIT業界で経験を積んだ後の2012年にヤンゴンに戻り、オーウェイを起業。ミャンマーでは珍しい先見性を持つ戦略的な起業家のひとり。

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